デザイナーアーカイブ[家具について]

Poul Kjaerholm(ポール・ケアホルム)

Poul Kjaerholm(ポール・ケアホルム)

1929-1980

ポール・ケアホルムは装飾を避け、優雅ではっきりしたラインで賞賛されたモダン家具をデザインしました。デンマーク、オスターウ゛ゥロー生まれ。祖父の勧めで家具職人に弟子入りします。修行を終えた1950年からはハンス・ウェグナーの事務所で働きます。同時にコペンハーゲン芸術工芸学校で学び、後に同校で1952年から56年まで教鞭をとることになりました。彼はそのまま1957年から76年にかけて王立芸術アカデミーにて家具とインテリアデザイン科の教授になりました。彼は元来家具職人として鍛えられましたが、工業生産を強く支持していました。そして彼の作品は構造体に従来の木ではなくスチールを多用していたので、デンマークの同時期の作品の中でも目立っていました。それでも彼は籐、キャンバス、皮そしてロープといった自然の素材を使った椅子をたくさんデザインしています。

バウハウスのデザインに刺激され、1957年のミラノトリエンナーレでグランプリを受賞したクロームスチールと皮の椅子の形を模倣する仕事を数年間していました。外側の繊細なフレーム、そして上げ網の座面と背面「PK25」が初めて1951年に出現。50年代を通じ彼は他にもいろいろな種類のデザインをして、その中には「PK22」のように籐を編んで作られた機能的椅子がありました。その椅子は体の圧でなだらかに籐が曲がり、体を柔らかく支え、そしてより快適にするために縁取りに詰め物を敷く技術も採用したものでした。皮で作られた巧妙な椅子「PK9」は別名チューリップチェアと呼ばれ、装飾が無く優雅さのあるもので彼の名前を国際的にしました。さらに先の1967年「PK20」では彼らしいデザインに大まかに基づいているのですが、肘掛部分から座面が浮いているようにするためにもっと精巧に曲げられた脚を作ろうと鋼鉄の質のバネを使ったりもしました。

ケアホルムの名は1961年の引き伸ばした皮が美しい「PK9」と1965年の「PK24ハンモックチェア」でも知られています。この作品は布張りしたヘッドレストがあり、緩やかに傾斜した籐編みの椅子に足を傾けられます。1957年には3本足のダイニングチェア「PK11」をデザインしており、シンプルにカーブした背もたれは当時の椅子によく見られるものでした。後期の彼の作品の1つに1976年作の「ルイジアナチェア」というコペンハーゲン近くのルイジアナ近代美術館のコンサートホールのためにつくられたもので、肘掛が有るものとないものとがあり、広く編んだメープルで作られています。

ケアホルムは主にフリッツ・ハンセン社にデザインをしていましたが、1955年以降は主にコル・クリステンセンにデザイン提供をしました。当時のデンマークデザイナーとは異なり、彼の作品はコペンハーゲンのキャビネットメーカーズギルドの展示会にほとんど出品されませんでした。というのも彼が皆よりさらに新しい素材で作品を作っていたためと言われています。彼は自然素材と伝統的工法を維持しながら、作品は大量生産やモダン運動にもっと傾倒して行きました。1958年ルニング賞を受賞。そしてデンマークや海外で展示会デザイナーとして仕事をしました。雑誌モビリアは彼のことを次のように記しています。「ポール・ケアホルムの家具が今日評価されるとしたら、その数の多さではなくその優位性である」

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