デザイナーアーカイブ[家具について]

Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)

Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)

1920-2005

家具デザイナーであり建築家のグレーテ・ヤルクは「弱いほうの性別の強さの良い例」と1960年のコペンハーゲンのキャビネットメーカーズギルド展示会で批評家に評されました。多作で多才な彼女はその個々の作品、そして人々の要望を上手に調整して環境全体を作り上げる能力の両方で有名です。彼女は多くの作品で新しい素材を使い、新しい製造過程を踏み、実験をすることに全力を注ぎました。

ヤルクは芸術工芸学校で訓練を受けた後、50年より10年間コペンハーゲンにある王立美術アカデミーにて「デンマーク近代家具デザインの父」と呼ばれるコーア・クリントの元で勉強を続けました。国外ではミラノトリエンナーレといった展示会にも出展しましたが、それよりも自身のデザインオフィスでフリッツ・ハンセン社やポール・イェッペセン社、そして毎年出品したキャビネットメーカーズギルド展示会のために作った作品で彼女の名は知れ渡るようになりました。彼女のプロジェクトのうちの1つに、1947年製作の「自立した女性の住処」向けの家具セットがあります。彼女はソファベッド、壁掛け式収納システム、そして机を製作し、専門職の女性が勉強できる場所と寝室を作りました。1952年には牛皮を張った受賞作の「イージーチェア」と、羊毛布を張った上品なダイニングチェアを展示しました。1963年に彼女がデザインした「GJチェア」もイギリスのデイリーメール家具コンペで優勝しました。座面と背面が劇的角度で曲げられていたことで斬新でしたが、その複雑な構造ゆえに当時は300脚程しか生産されませんでした。このGJチェアはニューヨーク近代美術館の永久保存作品にもなっています。

60年代は新しい哲学に基づいた、モダン住宅のための設備としていくつかのルームセットを製作しました。1961年に壁掛け式の収納システムを製作し、それは一番下の棚に入っているものを掃除する難しさを考慮した作品でした。彼女の画期的な方策は、一番下の棚は取り外したままにして、余ったスツールを収納するスペースとして使うことでした。ウォールナットないしはビーチ材で1962年に作ったリビングルームセットにはコーヒーテーブルがあり、リビングルーム内の人数の発展に対応させるためにワークテーブルとして長さを2倍にし、単純に楽しむというよりも生活のために使うようにしました。1963年の「Watch and Listen」リビングルームユニットはパイン材で作られて、自宅の広い娯楽システムを二分するための仕切りが組み込まれていました。テレビを中央に置き、ステレオやテープ、レコード、そして小さな映画プロジェクターを収納し飾る棚をデザインしました。そのユニットはそのまま配置されたスピーカーに挟まれる形となっていました。スピーカーに従来の格子のカバーをせずにむしろそのままにしてあるのは、工業デザインが家の景色の一部としてもっと真剣に考慮され始めたことを表す物事の中の1つでした。

50年代から60年代を通じてヤルクはほとんど全ての家具メーカーの展示会のために作品を製作し、その都度デザインの向上に努めました。彼女の女性らしい曲線美を描いた家具は今も多くの人々に愛されています。

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